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インターネットのルールを誰が決めるのか――マルチステークホルダーと資源保有者の権利

複数の機関が席を分け合うだけでは、開かれたガバナンスにはなりません。ルールの影響を受ける人が参加し、判断の根拠を問い、変化を働きかけるための考え方を整理します。

NRS初回公開 更新
このページの内容
多様な主体によるインターネットガバナンスを扱うNRS原文の挿絵。

原文に掲載された挿絵。

IPアドレスに事業を支えられているなら、そのルールも他人事ではない

IPアドレスや自律システム番号(ASN)は、ネットワークの識別と相互接続を支える資源です。自社名義で直接保有する企業もあれば、接続事業者から割り当てを受ける企業もあります。アドレスの変更が必要になれば、サービスの移行や顧客側の設定変更が生じ、収益にも影響しかねません。ただし、政策上の対立が直ちに通信断を意味するわけではありません。資源の登録、上流事業者との契約、経路の運用を分けて、誰が何に責任を持つかを確かめる必要があります。

利用しているIPアドレスは、本当に自分のものなのでしょうか。この問いはネットワークの設定だけでは解けません。利用条件を誰が定め、誰が変更し、紛争が起きたときに資源保有者が何を主張できるのか。答えはインターネットのガバナンスとも深く結びついています。

米国で発展したという歴史から、インターネットの運営体制には米国が大きな影響力を持ってきました。2005年の世界情報社会サミットでは、その影響力や政府間協力、国連の役割をめぐって議論が交わされました。世界共通の基盤を誰がどのように統治するのかが問われたのです。

NRSが重視するのは、大きな機関から別の大きな機関へ権限を移すことだけではありません。ルールの影響を受ける人が参加し、IPアドレスに対する資源保有者の権利も議題にできることです。その道筋の一つが、マルチステークホルダーによるガバナンスです。

参加者の名簿ではなく、一緒に決めるための方法

政府や政府間機関には重要な役割があります。ただ、それだけでインターネットに関わるすべての知識や利害を代表できるわけではありません。企業、市民社会、技術者、研究者、個人の利用者も、運用や発展を支えています。その経験と責任をルールづくりに生かす必要があります。

2005年のチュニスでのサミットは、多様な主体の参加を位置づけ、インターネット・ガバナンス・フォーラム(IGF)の設立につながる重要な節目となりました。IGFは対話の場であり、インターネット全体を管理する世界的な監督機関ではありません。

この考え方は、どの組織にもそのまま適用できる一冊の規則集ではありません。影響を受ける人を確かめ、経験を持ち寄り、実行できる政策をつくるための実践です。対象となる問題に合わせて進め方を組み立てます。

参加が形だけになっていないかを確かめる

Internet Societyは、分野や地域を越えた協力を重視しています。政府、企業、技術コミュニティ、学術界、市民社会では、見えている課題が異なります。その違いを持ち寄ることで、国境や専門領域をまたぐ問題を捉えやすくなります。

「マルチステークホルダー」と名乗るだけでは十分ではありません。議論が開かれているか、協力が一か所に集中していないか、説明を求められるか、参加の条件が公平かを見ていく必要があります。

開かれた議論で、異論も受け止める

決定の前に、関係する立場からできる限り幅広く意見を聞き、異論に向き合います。合意は議論を通じて確かめるものです。参加人数や委任状の数、声の大きさを、そのまま合意とみなすことはできません。

分散して協力する

異なる分野や地域の参加者が、それぞれの経験を示せるようにします。分散とは責任を曖昧にすることではありません。知識や問題解決の力、参加経路を一つの機関だけが握らないようにすることです。

判断の根拠を示し、説明責任を果たす

ボトムアップの仕組みでは、実際に結果を引き受ける人が議題に働きかけ、決定理由を問えることが重要です。公開された手続きと記録が、その土台になります。全員を代表していると主張するだけでは、誰が参加し、反対意見がどう扱われたかの説明にはなりません。

参加を認めるだけでなく、参加できる条件を整える

経済的な制約の大きい地域の人が、言語、費用、時間、専門知識の不足によって取り残されてはいけません。障壁を減らすことは、公平な参加と、質の高いインターネット接続を通じた社会参加の機会につながります。

一つの組織では答えを出せない問題

特に、次のような問題では複数の立場による協力が欠かせません。

利害や事情の異なる人々に影響が及ぶ問題。

複数の当事者の権利と責任が重なり合う問題。

異なる専門分野の知識を組み合わせる必要がある問題。

決定の正当性と当事者の納得が、実施の前提になる問題。

資源保有者も、ルールをつくる側へ

こうした原則は、インターネットが育ってきた過程にも通じます。異なるネットワークや人々が、開かれた協力によって問題を解いてきました。ガバナンスも、その精神を機関の権威だけで置き換えるべきではありません。

すべての意見をそのまま規則にすることが目的ではありません。さまざまな利害や懸念を共同の議論に載せ、判断の理由を後から検証できるようにすることが大切です。

NRSは、資源保有者が自らのIPアドレスを所有する権利を持つべきだと主張しています。これは改革の目標であり、すでに世界共通の法的権利として認められているという意味ではありません。多様な主体の参加は、その目標に向けた手段の一つです。番号資源に依存する人も、ルールを形づくる側に立つ必要があります。

原文と本版の位置づけ

NRSによる原文の公開日は2025年4月17日、アーカイブ上の最終更新日は2025年11月4日です。本日本語版は2026年10月31日に執筆し、資源保有者の権利と参加を求める論旨を引き継いでいます。歴史的な英語本文は別に保持します。2005年の議論と実際に成立した仕組みは区別が必要です。IGFは対話の場であり、世界的な規制当局ではありません。また、公開討議に参加できることと、選挙で投票資格を持つことも別です。

NRS原文 · Internet Society:IGF参加の経験 · マルチステークホルダー方式が機能する理由 · フィリピンのICT政策の実践 · NRS · ITU:2005年チュニス会合の成果 · APNICのポリシー策定手続き

自分に合った参加方法を確かめる

まず五つのRIRの公式案内から関係する機関を確認し、資源の登録情報と上流事業者との契約を照合してください。ポリシーへの参加と会員資格は別であり、会社の所在地だけで投票資格が決まるわけでもありません。以下では、政策の議論・提案と、選挙・参加資格の案内を分けています。

AFRINIC: 政策の議論・提案に参加する · AFRINIC: 選挙と参加資格を確認する

APNIC: 政策の議論・提案に参加する · APNIC: 選挙と参加資格を確認する

ARIN: 政策の議論・提案に参加する · ARIN: 選挙と参加資格を確認する

LACNIC: 政策の議論・提案に参加する · LACNIC: 選挙と参加資格を確認する

RIPE / RIPE NCC: 政策の議論・提案に参加する · RIPE / RIPE NCC: 選挙と参加資格を確認する

政策のページでは現行の提案と議論の場を確認します。選挙では対象の役職、日程、資格、代理人の手続きを別途確かめてください。公式ページは別の言語で提供される場合があります。ここにリンクがあることは、現在投票を受け付けているという意味ではありません。

まずはRIRの影響力を読み進めるか、現在のアクションを確認してください。資源の安定性が事業上の課題になっている場合は、NRS Shieldも参考になります。ポリシーの議論、選挙での投票、POAによる代理権の授与はそれぞれ異なる手続きです。政策提案には各機関の手続きが、投票には該当する資格要件が適用されます。委任するかどうかは、内容を理解したうえで、自由な意思により別途判断することです。断ることもできます。対象、範囲、期間、撤回方法を確かめてから決めてください。NRSへの参加や相談だけでPOAが成立することはなく、委任状を集めれば政策を決定できるということでもありません。

参加する

レジストリの決定は、あなたのネットワークに影響します。NRSとともに、その決め方を変えましょう。

どのネットワークも、運用者が関与せずに作られたルールの上で動いています。NRS はそれを変えるために存在します。私たちと共に立つ方法を選んでください。