Number Resource Society

NROの役割と、その権限の境界

五つの地域レジストリをつなぐNRO。ICANNやASOとの関係を整理すると、ルールが決まる場所と、事業者の権利を守るために残された課題が見えてきます。

NRS初回公開 更新

NRSの原文で扱う内容を、日本語で書き起こした記事です。原文の公開日は2025年4月16日、記録上の更新日は2026年7月15日です。制度に関する補足は2026年10月5日付です。

インターネットの番号資源は地域ごとに管理されています。しかし、地域の境界を越えた途端に、同じ番号が別のネットワークを指してよいわけではありません。五つの地域インターネットレジストリ(RIR)の連携を担うのが、Number Resource Organization(NRO)です。

NROは2003年にAPNIC、ARIN、LACNIC、RIPE NCCによって設立され、後にAFRINICが加わりました。各レジストリはIPv4アドレス、IPv6アドレス、自律システム番号(ASN)を管理しています。いずれもネットワークを識別し、相互接続するための資源です。

NROは地域をまたぐ課題を調整し、一部のガバナンスの議論でRIRの共通の立場を示し、グローバルポリシーの策定を支えます。一般の企業に直接アドレスを割り当てる窓口ではありません。資源の申請は、通常、該当地域のレジストリなど所定の経路で行います。

五つのRIRは、どの地域を担当するのか

AFRINIC

African Network Information Centreは、アフリカとインド洋の一部地域を担当します。

APNIC

Asia Pacific Network Information Centreは、アジア太平洋地域を担当します。

ARIN

American Registry for Internet Numbersは、米国、カナダ、カリブ海の一部の国・地域、北大西洋の一部を担当します。

LACNIC

Latin American and Caribbean Internet Addresses Registryは、ラテンアメリカとカリブ海の大部分を担当します。

RIPE NCC

Réseaux IP Européens Network Coordination Centreは、欧州、中東、中央アジアの一部を担当します。

各RIRには、それぞれの会員・コミュニティ参加の仕組み、地域のポリシー、運用サービスがあります。NROによる連携は、それらを一つの登録制度に統合するものではありません。

ICANNとはどうつながっているのか

NROとICANNは別の組織です。ICANNはインターネットの一意な識別子に関わる複数の仕組みを調整し、NROは番号資源に関する五つのRIRの連携を担います。

正式な接点となるのが、アドレス支持組織(ASO)です。両者の合意に基づき、NROがICANNの組織構造におけるASOの役割を果たします。

その仕事には、グローバルポリシー提案の審査、番号資源に関する提言、アドレスの運用・管理についてのICANN理事会への助言、規定に基づく役職者の選任などがあります。日常の資源申請を処理する仕事とは異なります。

NROとASOを区別する理由

NROはRIRが設立した調整組織であり、ASOはICANNの中で番号資源を扱う支持組織です。役割は重なりますが、活動の範囲まで同じではありません。

NROの執行評議会はASOの構造における一部の役割を担い、NRO番号評議会はASOアドレス評議会を兼ねます。資料に「NRO NC/ASO AC」と併記されるのはそのためです。NROには、このICANN内の役割に収まらない活動もあります。

NROの組織構成

原文では、執行評議会(EC)、番号評議会(NC)、事務局の三つを主な構成要素として説明しています。

ECには各RIRの理事会が指名した代表が参加し、機関同士の調整と意思決定を担います。NCはグローバルポリシーに関する役割を果たし、事務局は日常の運営を支えます。「評議会」という名称だけで、いずれも事業者による直接選挙の代表機関だと考えることはできません。

番号評議会の15人は、どう選ばれるのか

各地域から3人、合計15人で構成されます。地域ごとにコミュニティが2人を選び、RIRの理事会が1人を任命します。具体的な選出手続きは各地域のルールによります。全員を選挙で選ばれた委員と説明するのは不正確です。

ASO ACを兼ねるNCは、主に次の仕事を担います。

  • グローバルポリシーの策定を追い、地域の手続きが守られたかを確認する。
  • 提案を審査し、番号資源についてICANN理事会に助言する。
  • 規定された選任を行い、ICANNとRIRのコミュニティの対話を支える。

個別のRIRの地域ポリシーを通常この評議会が作るわけではありません。それぞれの地域の策定手続きが引き続き重要です。

設立覚書で何が定められたのか

NROの覚書(MoU)は、目的と組織、ECとNCの役割、意思決定、費用分担、グローバルポリシーの責任、紛争処理の仕組みを定めています。

2003年に四つのRIRが署名し、AFRINICは2005年に加わりました。これはICANNとNROのASOに関する合意とは別の文書です。後者の2004年版は2019年の合意に置き換えられており、引用する版を区別する必要があります。

2020年の追加合意で変わったこと

RIRは、インターネット番号登録システムの共同運用について、追加の約束を交わしました。

  • 登録システムの一意性を損なう行動を取らない。
  • 登録情報の正確性を高めるため、有効な措置を講じる。
  • 世界のネットワーク運用に間に合うよう、登録情報を公開する。
  • 一貫性と実効性のある登録サービスを協力して提供する。

この約束に関する紛争の仲裁条項も拡張されました。ただし、合意の当事者は登録機関です。すべての事業者が同じ仲裁手続きを直接利用できる、と読み替えることはできません。

登録機関の価値は資源を割り当てることだけではありません。記録が一意で、正確で、参照でき、運用に使い続けられる必要があります。

NROにアドレスを申請できるのか

NROは通常、企業、ISP、エンドユーザーに直接アドレスを割り当てません。状況に応じて、次のような経路を使います。

  • 担当地域のRIR。
  • 制度が設けられている地域では、国別インターネットレジストリ(NIR)。
  • ローカルインターネットレジストリ(LIR)やISP。
  • 所定の承認手続きによる、別の保有者からの移転。

NROはRIR間の連携を担う組織であり、個々の登録機関の代わりではありません。申請、登録、移転には、それぞれ該当する手続きが適用されます。

すべてのポリシーをNROが決めるのか

各RIRには独自のポリシー策定手続きがあり、事業者、会員、その他の参加者が地域のルールに沿って提案や議論を行います。

「グローバルポリシー」は、より限定された意味を持ちます。IANAとRIRの間の番号資源管理に関わり、各地域のコミュニティとICANNを含む所定の手続きを経るものです。世界に影響する課題なら何でも、この分類に入るわけではありません。

NROは地域の手続きをつなぎます。単一の世界的な中心から、あらゆる資源ルールを命じる仕組みではありません。参加するには、どこで決まる問題なのかを見極めることが大切です。

地域をまたぐ調整が必要な理由

インターネットは世界につながる一方、番号資源の管理は五つの機関に分かれています。連携が機能しなければ、次のような問題が起こり得ます。

  • 重複した登録や、互いに矛盾する記録。
  • グローバルポリシーの不整合、地域間の情報共有不足。
  • 技術サービスの欠落、機関が機能不全に陥った際の責任の不明確さ。
  • 番号資源管理への信頼の低下。

NROは、そのリスクを減らす協力の枠組みです。個々のアドレス利用をすべて支配することではなく、一意で正確な登録と、現実のネットワークで役立つ運用を支えることに意味があります。

RIRの認定後にも続く責任

従来のICP-2は、新たなRIRを認定する基準を定めた文書でした。見直しでは、継続的な義務、遵守状況の評価、重大なガバナンス不全への対応、認定の取り消し、危機の際の登録サービス継続も議論されています。

一度認定されれば、その後の説明責任を免れる制度であってはなりません。同時に、評価や認定取り消しには、明確な基準、証拠、適正な手続き、影響を受ける保有者の保護が必要です。

2026年10月5日時点で、公式日程は勧告案を最終化中とし、採択を今後の段階に置いています。2025年の意見募集は終了しています。また、ICP-2の見直しはASO合意上のグローバルポリシー手続きではありません。二つの制度を混同しないことが重要です。

よくある質問

NROは何の略ですか?

Number Resource Organizationです。五つのRIRの調整組織を指します。

主な目的は何ですか?

RIR間の連携、グローバルポリシーの支援、一定の議論でのRIRの代表、一貫した登録サービスの促進です。

参加している機関は?

AFRINIC、APNIC、ARIN、LACNIC、RIPE NCCです。

ICANNの一部門ですか?

別の組織です。ただし、合意に基づきASOの役割を担います。

RIRとは何が違いますか?

RIRは地域の番号資源を管理し、NROは五つのRIRに共通する課題を調整します。

企業にIPアドレスを発行しますか?

通常はしません。該当する地域の登録・割り当て経路で手続きします。

番号評議会とは何ですか?

15人で構成され、ASO ACを兼ねる機関です。グローバルポリシーの手続きを追い、ICANNへの助言や規定の選任を行います。

ガバナンスにどんな意味がありますか?

地域のポリシー、登録サービス、共通の責任を結び付けます。ただし、機関同士の連携があることだけで、個々の保有者の権利が十分に守られているとは言えません。

連携の先に、責任を問える仕組みを

NRSが重視するのは、機関が機能しなくなったとき、誰がリスクを負うかという問題です。登録機関が危機にあっても、事業者は顧客へのサービスを続け、契約を履行し、事業を守らなければなりません。機関同士の合意だけでは、十分な発言権や実効的な救済は保証されません。

私たちは、明確な義務、検証できる判断の根拠、サービスの継続、保有者の実質的な参加を求めます。改革の目的は、権力を別の機関へ移すことだけではなく、資源に依存する人がルールに関与し、決定を問い、権利を守れるようにすることです。

資料と参加への道筋

制度に関する補足は2026年10月5日に確認しました。NROの組織説明、NCの構成、ASOの役割、設立覚書を参照しています。政策と改革の状況は、グローバルポリシーの説明とICP-2見直しの日程で区別できます。これらは制度の資料であり、責任を明確にする改革を求める判断はNRSの立場です。

続けて登録制度の構造的なリスクやNRS Shieldをご覧ください。政策や選挙などでNRSに代理を依頼する場合は、POAと代理権の説明を別途読み、範囲、期間、撤回方法を確認してください。閲覧、入会、改革への賛同だけで代理権は生じません。POAによってIP資源の所有権が移るわけでもありません。

参加する

レジストリの決定は、あなたのネットワークに影響します。NRSとともに、その決め方を変えましょう。

NRSへの入会、代表権の委任、活動のフォローは、それぞれ別の選択です。自分に合った方法から始めてください。